五木寛之の反戦思想について―――その文学作品を通して

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五木寛之は少年時代日本の植民地である平壌で生活を送り、敗戦を受け、引揚者として日本に帰った。その後、早稲田大学に抹籍され、工場労働者、バーテン、放送作家、作詞家などをして、さまざまな仕事に従事した。特別な生活体験はその文学創作に多くの素材を提供した。1965年『さらばモスクワの愚連隊』によって第六回の『小説現代』新人賞を受賞して、翌年、『蒼ざめた馬を見よ』という小説によって第五十六回直木賞を受けて、日本文壇での地位を固めた。  第二次世界大戦が終わった直後、野間宏をはじめとする戦後派が現れた。戦後派の作家は文学作品によって反戦傾向を示しているが、民族心理に制約されるから、日本人の悲しみを描写し、日本人が戦争の被害者であることを強調する意識が強い。五木氏は『恋歌』、『蒼ざめた馬を見よ』、『深夜美術館』、『メルセデスの伝説』、『ヤヌスの首』などの反戦思想を反映する作品を作ったが、それらの戦争派の作家とは異なった傾向が見える。それで本論文は五木氏の文学作品を分析することによって、五木氏の反戦思想を探求してみようと思うのである。  本論は四章からなっている。第一章は五木寛之の植民地での生活体験、その反戦思想を反映する作品について紹介した。第二章では五木氏の文学作品を分析することによって日本人が戦争の被害者である反戦思想を論じた。第三章は五木氏が被植民地の国民の立場に立って、客観的に日本人が戦争の加害者であることを認めた反戦思想をを分析してみた。第四章は五木氏が全世界の立場でファシズムに反対する反戦思想を論じた。  とにかく、五木氏は民族主義の束縛から抜け出して、日本人が戦争の被害者である以外に、戦争の加害者でもあることも深く認識している。さらに、全世界の視野で反ファシズムの戦争観を持っていることを主張している。
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