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【要 旨】外来語は、各分野において広く使われ、日本社会にあふれるようになった。多くの言語学者は、外来語が氾濫していると思っている。外来語問題は、今や注目される国語問題の一つになっている。外来語が増え続けている実態をめぐって、日本では、外来語化に関しては、賛否両論がある。「外来語受け入れ派」と「外来語拒否派」という対立派がある。事物にはすべて二つの面がある。外来語の日本への影響には、二面性がある。積極的な影響をもたらすと同時に、消極的な影響も与える。本論文は、外来語の功罪について、客観的に分析し、研究したいと思う。
【キーワード】外来語 外来語の受容 外来語の功罪
一、はじめに
日本語の外来語は、日本語において、大切な位置を占めており、日本人の生活と緊密につながっている。日本が外國と付き合うにあたって、本国にない新概念、新事物などを輸入し、時間に伴って、次第に既存の言語に溶け込むことは、外来語の形成の一般的な過程である。
今では、外来語を抜きにしては日本文化を語ることができないほどである。外来語はもう日本人の生活に浸透している。このように、外来語は多用され、生活に定着しているものだけでなく、理解しにくい外来語が専門的分野で使われている。また、高齢者を中心に、外国語に縁の少ない人たちにとって、苦手なので、「外来語をやめよう」というような声をよく耳にする。このように、外来語は、二面性を持ち合わせている。
二、外来語の現状
(一)日常生活への浸透
では、外来語の現状に目を移していこう。日本国内の雑誌、新聞広告、駅の看板、折り込みコマーシャル、町中の宣伝文、電車内の吊り広告を始め、至るところにカタカナで表記された外来語が、よく目に入る。外来語がもう現代の日本社会に浸透していると言ってよいだろう。
(二)強い外来語化の傾向
今日、日本の外来語化の傾向が強まっている。現在の日本語では、在来語がいつの間にか、外来語によって置き換えられようとしている例がよくある。たとえば、帳面/ノート、さじ/スプーン、葡萄酒/ワイン、襟巻/マフラー、とっくりセーター/タートルネックセーター、魔法瓶/ポットなどがある。外来語が和語や漢語に代わって定着しつつある具体的な例がNHKの「現代人の言語環境調査」に示されている。
マフラー(92%)――襟巻(7%)
デパート(85%)――百貨店(12%)
という回答結果だった。外来語が同じ意味の和語や漢語を圧倒して多くの人に選ばれている。また、「ワイン」と「ぶどう酒」、「オープン」と「開店」という組合せは、1979年と1996年の二回の調査を比較すると次のようになっている。
1979年 1996年
ぶどう酒 54% 18%
ワイン 37% 77%
開店 66% 38%
オープン 28% 57%
いずれも、79年当時は、漢語の方が優勢であったのに、17年間に外来語が勢力を伸ばして、96年には逆転した結果を示している。この例などは、日常の暮らしの中で、語によっては、この先も外来語が勢力を増し、定着していく可能性を示しているものだと言えるだろう。
三、外来語の功罪
言葉の発展は文化進歩の必然的結果である。しかし、外来語が日本語に占める比率と需用度から見ると、外来語が氾濫している状態まで来ているので、日本語の危機到来の呼び声が高い。全体として見れば、プラスもあれば、マイナスの面もある。
(一)日本社会にもたらす積極的な影響
言語は文化のキャリアーでもあり、社会発展の道具でもある。「すべての知識は言葉を媒介にしなければ、効果的に伝達されえない。ほとんどすべての学問分野でなくてはならない最高援助は、言葉の援助である」。外来語は、その援助として、働いてきた。話されるにしろ、書かれるにしろ、外来語は、すべての外来知識を伝達するのに不可欠な媒介である。外来語は外来の文化を吸収する媒介者として、外国の文化を吸収すると同様に取り入れられる。つまり、外来語の日本社会への貢献は、西洋文明の乗り物として、諸国の先進技術、知識、思想、制度、芸術などを日本に取り入れ、日本社会の発展を促すということである。
鎖国時代に、オランダの書物の翻訳やそれに基づく著述から、西洋文化が摂取された。その時、オランダを窓口として入ってくる西洋の新知識が日本に影響をもたらした。オランダ語がこの時代に相当日本語の中に入り込んだ。まず医学である。「エキス」「コレラ」「キニーネ」「サフラン」などのオランダ語からの外来語は医療器具の類、薬品、薬草についてのものが多い。また、外来語を通して、天文、物理、化学などの分野に多くの新しい概念を取り入れた。たとえば、「アルカリ」、「ウェールガラス」、「ソーダ」、「コンパス」、「レンズ」などがある。そのほか、「カリ」「ハッカ」などのような工場についての用語も、少なくない。オランダとの交渉によって、これらの外来語は、西方の科学技術、文化、思想などと一緒に伝えられて、この時期に欧米科学文化の摂取に対する準備が進められたというのは過言ではないだろう。
明治維新後の日本は、自らを近代化し、西欧に追いつくことを至上目的としてきた。そのために、西欧の制度、思想、文物、技術などをどんどん取り入れた。学術、文化、生活の西欧化や近代化の進行などに伴って、以前は接触しなかった新思想、新概念、新しいものが日本に伝わった時、科学技術用語の翻訳で適切な訳語が作れない場合、また漢語訳の方が冗長過ぎて不便な場合には、音訳のカタカナ名で表記するようになって、外来語は必要な道具になった。典型的な例として、明治時代から、日本の鉄道は、イギリスからの技術指導によって建設され、その経営や技術管理、あるいは車両、諸施設の供給に関しても、長期にわたって外国人の指導の下におかれていた。鉄道という事業は在来の日本の技術にとっては全く未知数の技術システムであり、その導入にあたっては、全面的に外国の技術に依存しなければならなかったのである。この時、「スイッチバック」、「トンネル」、「モーター」、「ゲージ」、「機関車のテンダー」、「単線区間のタブレット」といった外来語を媒介として、鉄道に関する概念、知識を導入した。それによって、日本の鉄道が誕生した。また、日本の電気産業の技術は、アメリカからの輸入に依存していた。専門用語として、「アンペア」、「オーム」、「コイル」、「コネクター」なども、この時期に借用されて、電気に関する知識が取り入れられた。外来語は、電気技術の乗り物として、すぐれた技術を導入し、日本の電気産業の発展を促進してきた。このように、文明を支えているヨーロッパの考え方や技術を摂取するのに、新たな外来語が大幅に取り入れられた。 日本経済の発展は、積極的な技術革新に負う部分が大きかった。しかも、基本になる技術の大半は、アメリカを中心とする欧米諸国からの輸入に依存していた。外国で開発されたものを導入するのに、外来語が使用される。外来語は、文字の担体として、欧米先進技術を日本に運び、日本経済の発展を促すという働きをしている。奇跡的な日本の経済成長を支えた要因の一つは、日本語が外来語に寛容だったために新しい技術、概念、考え方などを取り入れやすかったからである。
日本は、外来語を補助の媒介として、外来技術などを吸収し、技術高度化の最先端の情報分野でいろいろな成果を得た。いろいろな分野で外来語の効果が見られる。経済の成長は高い技術にささえられたものでもあった。テクノロジー、ハイテク産業などがそのキーワードになる。録音や再生の分野をとってみても、LD、EPなどといっていた時代からカセット、CD、DVD、パソコンなどの新しいメディア商品が次々に生まれ、技術の革新が進んでいる。それらを利用したソフト産業も発展してきた。気象の分野でもエルニーニョ、アメダスなどと新しいことばが増えてゆく。このように、外国の技術を吸収するに従って、外来語が多数入った。その結果、先進的なものを導入し、日本の進歩を促してきた。
(二)日本社会にもたらす消極的な影響
外来語のマイナスの面は、まず、社会的なコミュニケーションへの阻害である。意味が不明瞭になりがちな外来語は日本語でのコミュニケーションに障害がおこると判断されている。現状では、公共性の高い場面で分かりにくい外来語が、無造作に多用され、必要な情報の共有や円滑なコミュニケーションに支障が生じている。これは、外来語の罪である。
外来語が分かりにくいということが、話題になったので、国立国語研究所は、平成10年度によく使われる行政用語における外来語の問題を取り上げて調査した。この調査では、同じ意味でカタカナ語と和語、漢語が併用されている8つのペアを取り上げ、「どちらが分かりやすいか」と「どちらに親しみを持つか」という観点からの調査がなされている(全国16歳以上の男女2200人対象)。両者の結果は非常に類似しているので、ここでは、前者のみを取り上げる。
<質問文>ここに挙げたもので、(a)の言葉と(b)の言葉は同じ意味で使われますが、あなたは、(a)と (b)では、どちらの方が意味が分かりやすいと思いますか。數値は、「分かりやすい」と答えた割合(%)である。
(1)(a)必要性62.8 > (b)ニーズ24.2
(2)(a)合意 86.7 > (b)コンセンサス6.8
(3)(a)計画94.1 > (b)スキーム 2.0
(4)(a)危険性56.0 > (b)リスク 27.5
(5)(a)展望60.7 > (b)ビジョン24.7
(6)(a)説明責任88.0 > (b)アカウンタビリティー2.3
以上の数値から見れば、外来語を凌いで、和語、漢語の方が分かりやすい。外来語には分かりにくいものがあるということは、この調査で明らかになったと言えよう。しかし、このような難解の外来語は、よく濫用されている。いま、日本社会には、「リベンジ」と同じく、「ユビキタス」、「スピリッツ」、「ミレニアム」、「メモリー」、「インフォームド コンセント」といった分かりにくい外来語、また辞書にも載っていない、多くの人には、意味がわかりにくい言葉、例えば、「ハーネス」、「タウンモビリティ」などの語が増えている。意味が分かりやすい言葉は、コミュニケーションを成立させるための重要な条件である。しかしながら、現在の外来語は、これを保証できない。新しいものには、意味が見えにくいものが無数にある。耳慣れない新しい外来語、意味のわからない外来語、専門的な外来語などは、情報の伝達を妨げる恐れがある。とりわけ、いろいろな立場の多くの人が読んだり、聞いたりする公共性の強い文章や放送などで、広く理解されない外来語を不用意に用いることは、伝えるべき内容が伝えるべき相手にきちんと伝わらない恐れが強い。外来語のわかりにくさは、社会生活に必要な情報を共有する上で大きな障害になる。
四、終わりに
外来語の受容で、日本語の語彙が豊かになることがわかる。これまでの日本になかった新しい物事や考え方を表現する言葉として、外来語が入って来る。外来語は、多くの外来知識を伝達するのに不可欠な媒介である。言い換えれば、外来語の日本社会への貢献は、西洋文明の乗り物として、諸国の先進技術、知識、思想、制度、芸術などを日本に取り入れて、日本社会の発展を促すということである。
しかし、外来語が日本語に占める比率と需用度から見ると、外来語が氾濫の状態になってきた。耳慣れない新しい外来語、意味のわからない外来語、専門的な外来語などは、情報の伝達を妨げる恐れがある。とりわけ、いろいろな立場の多くの人が読んだり、聞いたりする公共性の強い文章や放送などで、広く理解されない外来語を不用意に用いることは、伝えるべき内容が伝えるべき相手にきちんと伝わらない恐れが強い。外来語のわかりにくさは、社会生活に必要な情報を共有する上で大きな障害になる。
参考文献:
[1]「ことばの世界」マリオペイ著 外山滋比谷 講談社 1980年
[2]「英米外来語の世界」飛田良行 南雲堂 1981年
[3]『日本語はどう変わるか』樺島忠夫 岩波書店1981年
[4]『外来語の語源』 吉沢典男 石綿敏雄 角川書店1979年
[5]『日本語の中の外国語』 石綿敏雄 岩波書店1985年
[6]《日语知识百题》彭广陆 北京大学出版社2007年
【キーワード】外来語 外来語の受容 外来語の功罪
一、はじめに
日本語の外来語は、日本語において、大切な位置を占めており、日本人の生活と緊密につながっている。日本が外國と付き合うにあたって、本国にない新概念、新事物などを輸入し、時間に伴って、次第に既存の言語に溶け込むことは、外来語の形成の一般的な過程である。
今では、外来語を抜きにしては日本文化を語ることができないほどである。外来語はもう日本人の生活に浸透している。このように、外来語は多用され、生活に定着しているものだけでなく、理解しにくい外来語が専門的分野で使われている。また、高齢者を中心に、外国語に縁の少ない人たちにとって、苦手なので、「外来語をやめよう」というような声をよく耳にする。このように、外来語は、二面性を持ち合わせている。
二、外来語の現状
(一)日常生活への浸透
では、外来語の現状に目を移していこう。日本国内の雑誌、新聞広告、駅の看板、折り込みコマーシャル、町中の宣伝文、電車内の吊り広告を始め、至るところにカタカナで表記された外来語が、よく目に入る。外来語がもう現代の日本社会に浸透していると言ってよいだろう。
(二)強い外来語化の傾向
今日、日本の外来語化の傾向が強まっている。現在の日本語では、在来語がいつの間にか、外来語によって置き換えられようとしている例がよくある。たとえば、帳面/ノート、さじ/スプーン、葡萄酒/ワイン、襟巻/マフラー、とっくりセーター/タートルネックセーター、魔法瓶/ポットなどがある。外来語が和語や漢語に代わって定着しつつある具体的な例がNHKの「現代人の言語環境調査」に示されている。
マフラー(92%)――襟巻(7%)
デパート(85%)――百貨店(12%)
という回答結果だった。外来語が同じ意味の和語や漢語を圧倒して多くの人に選ばれている。また、「ワイン」と「ぶどう酒」、「オープン」と「開店」という組合せは、1979年と1996年の二回の調査を比較すると次のようになっている。
1979年 1996年
ぶどう酒 54% 18%
ワイン 37% 77%
開店 66% 38%
オープン 28% 57%
いずれも、79年当時は、漢語の方が優勢であったのに、17年間に外来語が勢力を伸ばして、96年には逆転した結果を示している。この例などは、日常の暮らしの中で、語によっては、この先も外来語が勢力を増し、定着していく可能性を示しているものだと言えるだろう。
三、外来語の功罪
言葉の発展は文化進歩の必然的結果である。しかし、外来語が日本語に占める比率と需用度から見ると、外来語が氾濫している状態まで来ているので、日本語の危機到来の呼び声が高い。全体として見れば、プラスもあれば、マイナスの面もある。
(一)日本社会にもたらす積極的な影響
言語は文化のキャリアーでもあり、社会発展の道具でもある。「すべての知識は言葉を媒介にしなければ、効果的に伝達されえない。ほとんどすべての学問分野でなくてはならない最高援助は、言葉の援助である」。外来語は、その援助として、働いてきた。話されるにしろ、書かれるにしろ、外来語は、すべての外来知識を伝達するのに不可欠な媒介である。外来語は外来の文化を吸収する媒介者として、外国の文化を吸収すると同様に取り入れられる。つまり、外来語の日本社会への貢献は、西洋文明の乗り物として、諸国の先進技術、知識、思想、制度、芸術などを日本に取り入れ、日本社会の発展を促すということである。
鎖国時代に、オランダの書物の翻訳やそれに基づく著述から、西洋文化が摂取された。その時、オランダを窓口として入ってくる西洋の新知識が日本に影響をもたらした。オランダ語がこの時代に相当日本語の中に入り込んだ。まず医学である。「エキス」「コレラ」「キニーネ」「サフラン」などのオランダ語からの外来語は医療器具の類、薬品、薬草についてのものが多い。また、外来語を通して、天文、物理、化学などの分野に多くの新しい概念を取り入れた。たとえば、「アルカリ」、「ウェールガラス」、「ソーダ」、「コンパス」、「レンズ」などがある。そのほか、「カリ」「ハッカ」などのような工場についての用語も、少なくない。オランダとの交渉によって、これらの外来語は、西方の科学技術、文化、思想などと一緒に伝えられて、この時期に欧米科学文化の摂取に対する準備が進められたというのは過言ではないだろう。
明治維新後の日本は、自らを近代化し、西欧に追いつくことを至上目的としてきた。そのために、西欧の制度、思想、文物、技術などをどんどん取り入れた。学術、文化、生活の西欧化や近代化の進行などに伴って、以前は接触しなかった新思想、新概念、新しいものが日本に伝わった時、科学技術用語の翻訳で適切な訳語が作れない場合、また漢語訳の方が冗長過ぎて不便な場合には、音訳のカタカナ名で表記するようになって、外来語は必要な道具になった。典型的な例として、明治時代から、日本の鉄道は、イギリスからの技術指導によって建設され、その経営や技術管理、あるいは車両、諸施設の供給に関しても、長期にわたって外国人の指導の下におかれていた。鉄道という事業は在来の日本の技術にとっては全く未知数の技術システムであり、その導入にあたっては、全面的に外国の技術に依存しなければならなかったのである。この時、「スイッチバック」、「トンネル」、「モーター」、「ゲージ」、「機関車のテンダー」、「単線区間のタブレット」といった外来語を媒介として、鉄道に関する概念、知識を導入した。それによって、日本の鉄道が誕生した。また、日本の電気産業の技術は、アメリカからの輸入に依存していた。専門用語として、「アンペア」、「オーム」、「コイル」、「コネクター」なども、この時期に借用されて、電気に関する知識が取り入れられた。外来語は、電気技術の乗り物として、すぐれた技術を導入し、日本の電気産業の発展を促進してきた。このように、文明を支えているヨーロッパの考え方や技術を摂取するのに、新たな外来語が大幅に取り入れられた。 日本経済の発展は、積極的な技術革新に負う部分が大きかった。しかも、基本になる技術の大半は、アメリカを中心とする欧米諸国からの輸入に依存していた。外国で開発されたものを導入するのに、外来語が使用される。外来語は、文字の担体として、欧米先進技術を日本に運び、日本経済の発展を促すという働きをしている。奇跡的な日本の経済成長を支えた要因の一つは、日本語が外来語に寛容だったために新しい技術、概念、考え方などを取り入れやすかったからである。
日本は、外来語を補助の媒介として、外来技術などを吸収し、技術高度化の最先端の情報分野でいろいろな成果を得た。いろいろな分野で外来語の効果が見られる。経済の成長は高い技術にささえられたものでもあった。テクノロジー、ハイテク産業などがそのキーワードになる。録音や再生の分野をとってみても、LD、EPなどといっていた時代からカセット、CD、DVD、パソコンなどの新しいメディア商品が次々に生まれ、技術の革新が進んでいる。それらを利用したソフト産業も発展してきた。気象の分野でもエルニーニョ、アメダスなどと新しいことばが増えてゆく。このように、外国の技術を吸収するに従って、外来語が多数入った。その結果、先進的なものを導入し、日本の進歩を促してきた。
(二)日本社会にもたらす消極的な影響
外来語のマイナスの面は、まず、社会的なコミュニケーションへの阻害である。意味が不明瞭になりがちな外来語は日本語でのコミュニケーションに障害がおこると判断されている。現状では、公共性の高い場面で分かりにくい外来語が、無造作に多用され、必要な情報の共有や円滑なコミュニケーションに支障が生じている。これは、外来語の罪である。
外来語が分かりにくいということが、話題になったので、国立国語研究所は、平成10年度によく使われる行政用語における外来語の問題を取り上げて調査した。この調査では、同じ意味でカタカナ語と和語、漢語が併用されている8つのペアを取り上げ、「どちらが分かりやすいか」と「どちらに親しみを持つか」という観点からの調査がなされている(全国16歳以上の男女2200人対象)。両者の結果は非常に類似しているので、ここでは、前者のみを取り上げる。
<質問文>ここに挙げたもので、(a)の言葉と(b)の言葉は同じ意味で使われますが、あなたは、(a)と (b)では、どちらの方が意味が分かりやすいと思いますか。數値は、「分かりやすい」と答えた割合(%)である。
(1)(a)必要性62.8 > (b)ニーズ24.2
(2)(a)合意 86.7 > (b)コンセンサス6.8
(3)(a)計画94.1 > (b)スキーム 2.0
(4)(a)危険性56.0 > (b)リスク 27.5
(5)(a)展望60.7 > (b)ビジョン24.7
(6)(a)説明責任88.0 > (b)アカウンタビリティー2.3
以上の数値から見れば、外来語を凌いで、和語、漢語の方が分かりやすい。外来語には分かりにくいものがあるということは、この調査で明らかになったと言えよう。しかし、このような難解の外来語は、よく濫用されている。いま、日本社会には、「リベンジ」と同じく、「ユビキタス」、「スピリッツ」、「ミレニアム」、「メモリー」、「インフォームド コンセント」といった分かりにくい外来語、また辞書にも載っていない、多くの人には、意味がわかりにくい言葉、例えば、「ハーネス」、「タウンモビリティ」などの語が増えている。意味が分かりやすい言葉は、コミュニケーションを成立させるための重要な条件である。しかしながら、現在の外来語は、これを保証できない。新しいものには、意味が見えにくいものが無数にある。耳慣れない新しい外来語、意味のわからない外来語、専門的な外来語などは、情報の伝達を妨げる恐れがある。とりわけ、いろいろな立場の多くの人が読んだり、聞いたりする公共性の強い文章や放送などで、広く理解されない外来語を不用意に用いることは、伝えるべき内容が伝えるべき相手にきちんと伝わらない恐れが強い。外来語のわかりにくさは、社会生活に必要な情報を共有する上で大きな障害になる。
四、終わりに
外来語の受容で、日本語の語彙が豊かになることがわかる。これまでの日本になかった新しい物事や考え方を表現する言葉として、外来語が入って来る。外来語は、多くの外来知識を伝達するのに不可欠な媒介である。言い換えれば、外来語の日本社会への貢献は、西洋文明の乗り物として、諸国の先進技術、知識、思想、制度、芸術などを日本に取り入れて、日本社会の発展を促すということである。
しかし、外来語が日本語に占める比率と需用度から見ると、外来語が氾濫の状態になってきた。耳慣れない新しい外来語、意味のわからない外来語、専門的な外来語などは、情報の伝達を妨げる恐れがある。とりわけ、いろいろな立場の多くの人が読んだり、聞いたりする公共性の強い文章や放送などで、広く理解されない外来語を不用意に用いることは、伝えるべき内容が伝えるべき相手にきちんと伝わらない恐れが強い。外来語のわかりにくさは、社会生活に必要な情報を共有する上で大きな障害になる。
参考文献:
[1]「ことばの世界」マリオペイ著 外山滋比谷 講談社 1980年
[2]「英米外来語の世界」飛田良行 南雲堂 1981年
[3]『日本語はどう変わるか』樺島忠夫 岩波書店1981年
[4]『外来語の語源』 吉沢典男 石綿敏雄 角川書店1979年
[5]『日本語の中の外国語』 石綿敏雄 岩波書店1985年
[6]《日语知识百题》彭广陆 北京大学出版社2007年